OpenAIがハリウッドにムービー生成AI「Sora」を売り込んでいると報道される

大規模言語モデルのGPTや画像生成AIモデルのDALL-Eを開発するOpenAIが、テキストからムービーを生成するAIの「Sora」を2024年2月に発表しました。そんなSoraについて、OpenAIはハリウッドの映画スタジオやメディア幹部、タレントエージェンシーと会合をして、Soraを映画制作に使うよう売り込んでいるとBloombergが報じています。
Bloomberg - Are you a robot?
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-03-22/openai-courts-hollywood-in-meetings-with-film-studios-directors

Soraはテキストから最長1分間のムービーを生成できるAIで、物理法則をシミュレートしながら「複数のキャラクター、特定のモーション、被写体と背景の正確な詳細を含む複雑なシーンを、物理世界にどのように存在するのかを理解しながら生成できる」という特徴があります。テキスト(プロンプト)からムービーを生成するAIは過去にもありましたが、過去のAIだと動きの原因と結果を理解できないため、たとえば「クッキーをかじる動きをしたのに、クッキーには食べられた跡が残らない」というような矛盾を含むムービーがしばしば生成されました。しかし、Soraは物理シミュレートを用いて「現実世界を理解」しているため、より自然で現実に即したムービーを生成することができます。
テキストから物理法則をシミュレートしながら動画を生成するAI「Sora」をOpenAIが発表 - GIGAZINE

Soraの発表に際して、OpenAIはいくつかのデモムービーを公開しました。例えば以下は、「ネオンとアニメーションの看板がある東京の通りを歩く、黒いレザージャケットに赤いロングドレス、黒いブーツ、黒い財布、サングラスを身に付けた赤い口紅のスタイリッシュな女性。彼女は自信に満ちた歩き方をしているほか、多くの歩行者が街を歩いている」というテキストからSoraで生成したデモムービー。

Soraは物理シミュレートにより世界のスケーリングが可能で、一貫した3D映像の元でダイナミックなカメラモーションができたり、まったく異なる2つのムービーを融合させることができたりと、さまざまなことが実行できる見込み。また、物理シミュレートを含みますが、ゲームやイラストベースのアニメーション、現実ではありえないムービーなども再現可能です。以下は、Soraのデモで示された「リアルな雲で『SORA』と形成する」ムービー。

記事作成時点では、OpenAIはSoraをいつ頃リリースするのかは明らかにしていません。しかし、エンターテインメント業界に詳しい関係者によると、OpenAIはハリウッドに対してリリース前からSoraを売り込んでいるそうです。
匿名の関係者らがBloombergに語った内容によると、OpenAIの最高執行責任者(COO)であるブラッド・ライトキャップ氏は2024年2月下旬に、ハリウッドの映画関係者に対し最初の会談を実施したとのこと。ライトキャップ氏は数人の同僚とともに、Soraでムービーを生成するプロセスなどについてデモンストレーションを行いました。またその数日後、OpenAIの最高経営責任者(CEO)であるサム・アルトマン氏が、アカデミー賞授賞式の後にロサンゼルスで開催されたパーティに出席したことが確認されています。
Bloombergによると、2024年3月時点でSoraは一般にリリースされていませんが、OpenAIは一部の有名俳優や監督にSoraへのアクセス権を配布しているそうです。OpenAIの広報担当者は、Soraの発表に際して「OpenAIは、AIの安全性を確保し、今後の展開について人々にアイデアを提供するために、段階的にAIの進歩を展開する反復展開のプロセスを実施しています。このプロセスを通じて、エンターテインメント業界と協力していく意図的な戦略を持ってきました。今後も、アーティストやクリエイターとの継続的な対話を楽しみにしています」と述べました。
ハリウッドではAIに対する意見が別れており、「脚本家や俳優の仕事を奪うようなAIの使用を規制せよ」と要求するストライキにも発展しています。OpenAIはこれに対し、「誤情報やヘイトコンテンツ、偏見などの分野の専門家で構成されたレッドチームと協力し、モデルを敵対的にテストします」と安全措置を講じる旨を述べているほか、Soraによって生成されたムービーかどうか示す要素をメタデータに含めると明言しています。
ハリウッドの俳優や脚本家が「仕事を奪うようなAIの規制」を求めてストライキを起こす - GIGAZINE

OpenAIは依然としてAI開発の最前線にいますが、AppleがiPhone向けにGoogleのAIであるGeminiを採用する可能性があると報道されたり、Googleが1枚の写真と音声から「音声に合わせて身ぶり手ぶりを交えて話すリアルな動画」を生成するAIの「VLOGGER」を発表していたり、またAIスタートアップも数多く急成長していることから、「OpenAIは、AI競争に追いつくために、ハリウッドに売り込んでいます」とBloombergは指摘しました。